2020年10月19日月曜日

[3] アメリカで6本抜歯して思ったこと

 体は消耗品である。5日前に歯を6本抜いた。

抜いたこの6本の歯は、今世で2度と戻ってくることはない。数ヶ月後にインプラントを2本うえて今後は生きていくことになる。


これまであまり大きな病気はしてこなかった。持病といえば小児喘息とアレルギー性鼻炎。どちらも苦しい思いはしたし、するが、何かを失うという類のものではなかった。

(ちなみに免疫学研究者は、普通よりアレルギー持ちが多い気がする)


歯を失ったことは残念なことではあるのだけれど、自分としては学んだことの方が多いところがあり、実はそんなに落ち込んでいない。ニュー新妻の始まりだとさえ思っていたりする。


学んだことをざっと挙げてみる。

アメリカの医療費はとても高い。これは明らかに虫歯だ、と気がついた時に自分はとっさに妻に謝った。地獄のように高い家賃に対して、博士研究員の給料はわずか、経済的には恵まれていない状況にある。しかし妻からしっかりと怒られた。「こうゆう時のためにお金貯めてるんでしょ、申し訳ないと思う気持ちが全く意味わからない」嬉しかった。多いなる学びだった。



アメリカで病院にかかるという経験を得た。日本語でも病院にいくのは億劫なのに、英語となるとその気持ちは何倍にも膨れ上がる。普段話し慣れないことを話さなければならないので鬱々とするし、そもそも予約の壁が高すぎる。

なんやかんやで、自分の歯科保険の内容を理解して、電話で予約をして、歯医者さんと話して質問や意思決定をしてと、色々な新しい経験をした。いつもちっぽけな恥ずかしいという謎の気持ちが邪魔をする、今回も現れたがなんとか蹴飛ばした。いつになったらこの謎の感情とお別れできるのだろう。


困ってますシグナルをしっかり出して、ガッツリ助けてもらった。Stanford大学にはEnglish in actionというプログラムがあって、大学側が私たちのような非アメリカ人とネイティブスピーカーとを仲介してくれ、おしゃべりしながら英語やアメリカ文化を学ぶ機会を作ることができる。1年目の時だけ参加していて、なんと自分のパートナーは元歯医者さんで、Stanford大学で客員教授として解剖学を教えている先生であった。歯医者を選ぶにあたって、彼の意見や、自分の研究室のボスの意見を聞いた。また友人の奥さんが歯医者だったので不安なことに関して質問に乗ってもらったりもした。大学で働いていらっしゃる日本人の麻酔科の先生からは、大学で手術なら私麻酔しますよ!なんて連絡がきたりもした。もうその気持ちが嬉しすぎて感謝しきれなかった。自分は昔から人に頼るのがすごく苦手でいつも避けようとしてしまうのだが、以上のことをできたのは自分にとっては成長だった。こうゆう力のことを受援力というらしい。これ大事、自分の成長課題です。


色々面白かった。今回の虫歯、慰めもある程度あるのかもしれないが、歯医者さんからは清潔を保つのが不可能な歯並びだからしょうがない、と言われた。12歳臼歯が横になっていて、親知らずはきちんとはえているのはかなり珍しいようで、歯科助手の方が驚いていた。

「こんなの見たことない!きっと歯医者さんにとってはexcitingなはずだよ!」と言われたのが面白かったし、事実歯医者さんが速攻で「interesting! 」 と言ったのが面白すぎた。

アメリカの歯科は細分化されていて、普通の歯医者さんに行った後はすぐに口腔外科にまわされた。新しい病院にいくたびに登録をしなければいけないのだが、名前の記載をするさいに、Mr.とかMs.とかを選ぶところがある。実はこの中に Dr. が入っている。これは医師だけでなく博士号を持つ人もまるをしていいのだ。何の気なしにこれを選んだら、歯科助手の人や受付の人からひたすら「ドクター新妻」と言われ続けて恥ずかし面白かった。自分は小柄なアジア人な上に割と童顔な方なので、歯科助手の人からは「こんなに若いのにドクターなの!?」と驚かれて面白かった。

ちなみに12歳臼歯という表現についてTwitterで子供じゃないんだから専門用語使え、というリプライがあって驚いた。何か辛いことでもあったのだろうか、世の中には色々な人がいるなと再確認する経験にもなった。

当日手術をする時に、意識を失う麻酔が初めてなことに緊張していたら、こんなの酔っぱらうのと一緒ですごく楽しいのよ!とノリノリで言ってきた助手さんも最高、手術前にかける音楽のリクエストがないか聞かれたのも非常に面白かった。

麻酔はすごい、点滴されてから目が乾くほどギラギラに目を開けて、「まだ起きてるから始めないでね!!」アピールを猛烈にしていたが、そんなのせいぜい数十秒だったようだ。体感1秒で施術は終了。しかし1時間以上たっていた。この間自分の身に何が起きていたかを何も知らないって、なんと不思議なことだろうか。麻酔作った人本当にすごい。そして施術の後は若干テンション高かった。ここ数年しっかり酔っぱらうことってあんまりなかったから久しぶりの感じ(自分は酔うとテンションが上がるタイプ)。

抜いた歯は全部もらった。バラバラになっているものもあったが、6本分となると結構な量。Teeth fairy が実在するなら結構お金もらえると思う。

もちろんお金はもらえるどころか、当然払う。保険で80%カバーが入って払ったのは550ドルくらい。良い保険のようでよかった。


ずーっと悩んできたこの歯並び、歯の磨き方も色々工夫してきたけどやっとその悩みの種が無くなる。それに関しての喜びが結構大きい。実は渡米の半年前、歯医者には行って相談していた。矯正歯科にも行ったのだが、これは直すのに年単位かかるので今できることはありません。できるだけ清潔を保って、貯金して、日本に帰ってからやるのがいいでしょうね、と言われていたのだ。


将来外国で働くことを考えている方は、高額な治療だったとしてもなるべく不安は解消してから海を渡ることをお勧めします。直接会ったことがある人もない人もたくさんの人にご心配をおかけしました、やさしい言葉をかけてくださったみなさん、ありがとうございます。

痛み止めがガッツリ効いているタイミングでこれを書いたので、結構ポジティブな内容になった笑。まだ痛いときはめっちゃ痛いし、うーうー言っています。細胞達、頑張って素早く組織修復してくれ。













2 件のコメント:

  1. 先日のライブ授業の後、どうなったのか、少し気がかりでしたが
    無事に歯科治療を終えられたようで、良かったです。
    しかもいろいろな心強い歯科の専門家の助けを得られて
    ベストな治療をされていたみたいで、本当によかったです。
    どうかお大事になさって下さい。

    貴重な体験談をシェアしていただき、ありがとうございます。

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  2. やさしいコメントいただいてありがとうございます!
    色々な方の助けをいただけて本当に感謝です。

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