2020年10月23日金曜日

[7] 再現性を確認する

 サイエンスで最も大事なのが再現性だ

つまり、同じ実験を同じ手順でやって同じ結果が出るということ。

生物学は”なまもの(生物)”を扱うので色々難しいのだけれど、人も研究室も変わっても再現性がある現象が当然ベストで、それを見出したい・実現したいと常日頃思っている。

ビギナーズラックという言葉はちょっと意味が違うけど、1回目の実験はなぜかいいデータになりやすい、と思っている研究者は少なからずいるような気がする。



自分は免疫学の研究室に入った大学生時代、最初に与えられた研究テーマがモノクローナル抗体の樹立だった。実はこのモノクローナル抗体作り、外注で行うことができることも相まって、意外と基礎免疫学の領域でも若い世代の研究者でやったことがある人が少ない。

YouTubeの動画では、体の中の防衛システムの1つとして抗体を紹介した。1種類の抗体は1種類だけの抗原にしか結合しない。これを特異的な結合と表現する。(特異性をわかりやすく説明するのに登場するのが、鍵と鍵穴の説明だ。)

研究者たちは、この抗体の特異性を利用して実験としてのツールとして使っている。免疫学者だけでなく、生命科学に関わる大半の人か何かの実験で抗体を使ったことがあると言えるほど抗体はありふれたツールなのである。(またいつかどこかで詳細に解説したい。)

たった1種類、幸運に恵まれて作製に成功した新規抗体のおかげで自分は博士号をとることができた。



もう抗体作りは一生しないと思ってアメリカに来たのだけれど、色々なきっかけがあってボスから背中を押され再開した。研究の内容は秘密にしなければならないので詳細は述べないけれど、最近難しい抗原達に対する抗体作りに挑戦している。

抜歯の直前に、ある程度希望に近い抗体が1つだけできていそうな結果が出た。960個から選び出してきた、たった1つだ。

5年前の自分ならここでアゲアゲに喜んでしまうのだが、最近は「お♪」くらいにして平常心に戻す心がけをしている。なぜかというと、何度も何度も何度も何度も、「再現性」に苦しめられてきたからだ。さらにはその時には失念していて見過ごされていた事実や、その後の新たな着眼点により、やっぱりいまいちだね、となったりすることだってあるあるだ。

今日は、とりあえず休み前に取れたデータの再現性がとることができた。ひとまずは安心。

でもまだまだ確認しなきゃいけないことは将来あるし、ちょっと喜んで、また次へ。

一歩ずつ、一歩ずつ、前へ、前へ。


4 件のコメント:

  1. 私は、食品の乾燥を生業としています。取引先のメーカーさんから、製造ラインに乗せるために少ロットの試作の依頼を受けたりもします。
    乾燥条件を探る為と開発設計通りに出来上がるかを見極める事が目的の試作なんですが、これがまた曲者でして。試作で上手く行っても、製造ラインに乗せたら、あれ?って事があったりするんです。先生の仰る事と同じように、再現性が取れないと製品化出来ない事もあります。
    メーカーさんからすれば、試作を評価してGO を出したのに、冗談じゃないと。ボツになった製品は別の製品の原料として使用してもらえたら御の字で、賠償金を支払い廃棄になることも。大概はリカバリー生産まで時間が無いので、再現性を得るために、技術屋も、今迄に得てきた知見を総動員してタイムリミットまでに、一歩ずつ、一歩ずつ 、前へ、前へと試作のデータとにらめっこの日々が続きます。

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  2. 朝倉さん
    大変興味深い話を誠にありがとうございました。乾燥の技術、とても興味があります。乾燥しすぎても、できなくてもダメでしょうし、そのちょうど良い乾燥度合いってどう決まるのかなぁと思いました。

    昔抗体を酵素を使って2つに切り分けるという実験をやっていたことがあります。抗体の濃度・酵素の量・温度・混ぜるスピードなど色々なパラメーターがあってついに成功したと思いきや、そこで得た液量を単純に5倍にしてやったら全然うまくいかなかったことがありました。5倍のボリュームでやるなら、その量で条件を設定すべきだったわけです。

    こうした数々の苦しい失敗が今の成長につながっています。なんでも積み重ねですよね。精進せねばです。

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  3. スプレードライという方法で製造しています。
    ざっくりと言うと、調合した調味液を霧状にして熱風をあてて水分を蒸発させて粉にします。霧状とは、イメージとして霧吹きでしゅっしゅとした感じです。ちょうど良い乾燥度合いは、調合液はメーカーさんのレシピなのでいじれませんので、ろいろややこしい条件があるのですが、先ずは粉になるようにinlet、outletの温度を決めて…みたいに調整して行きます。
    しかし、上手く行くかはやってみないと分からない。そこが難しく悩ましいのですが、たまらなく面白いんですよね。
    日々の積み重ねは重要かつ必要不可欠です。でも職人技も必要不可欠なんですよ。バレーボール女子日本代表の中田久美監督の言うところの『試合を決めるのに必要な事って、最後は結局“気合いと根性!”』(笑)

    難しい壁にぶち当たった時に思うべき事。正に名言です。(笑)

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    1. うわぁ全く今までの人生で考えもしたことがない技術の話にワクワクします。調味液を霧状にして粉にするとは!
      言語化して継承できるコツと、その人にしかできない職人技がそれぞれあるのでしょうね。どちらも気になる。

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