麻酔を受けて鎮静をかけられ、体感数秒後には6本の歯を失った。あの人生の空白に何が行われていたのか今でもとても気になる。あの感じは、酩酊で記憶を失ったのとも違う。人生の物語が突然また再開したみたいな感じ。
歯を失ってからというもの、歯について頭から離れることはない。下顎の大きい臼歯がなくなって、食べ物を口の中ですりつぶすことが困難になり、味について気がついたことがあった。
ある日妻と日本スーパーに行って、寿司がパックで売っており二人でどうしても食べたくなっった。ウキウキして食べてみると、これが全くおいしくない。刺身を食べた時に感じるあの独特な油が滲み出る感じがないことに気がついた。
肉類も同様。自分は肉が大好きなのだけれどやっぱりなんだか味が物足りない。
こうした食材は臼歯によるすりつぶしがあってこそ、味わいが生まれるのだと気がついた。
一方で、スープは当たり前のことだがその影響は受けにくい。具が少ないスープであれば、味は一直線に感じられる。
味のハーモニーと言った表現をするリポーターがたまにいるが、舌が繊細な人はこうした咀嚼の段階で変わっていく味の変化にも気がつくのかなぁとふと思った。
こういった状況で助かるのが、中国のおかゆが大変美味しいことだ。雑炊はともかく、お粥って妻とお付き合いを始める前はほとんど食べたことがなく、病人食のような印象を受けていた。
しかし中国ではお粥は朝ご飯の定番中の定番で、物凄い種類のお粥がある。そして夜ご飯で余った食材などは、なんでもお粥に変えられちゃう。
遠くない将来、タピオカブームのように、日本でお粥ブームが訪れるような気がする。
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